クイズ王の部屋

『レインマン』

映画『レインマン』を観た。

重い自閉症で驚異的な記憶力を持つレイモンド(兄)と、経営はピンチのようだがけっこうやり手な感じがする自動車のディーラー、チャーリー(弟)の兄弟。この対比が明確だ。冒頭でトム・クルーズ扮するチャーリーが取引先と綱渡りのようなやりとりをする場面があるが、これは自閉症の人が最も苦手とすることだろう。ダスティン・ホフマン扮するレイモンドのような人は臨機応変な対応ができないのだ。だから、信号を渡っている途中で「Don’t walk」の表示に変わった時に、周りの車のことなどおかまいなしに立ち止まってしまったりする。

レイモンドは数字の記憶力が異常なほど優れている。計算能力もすごい(答えが頭に浮かぶらしいから、どのような「計算」なのだろう?)。これが普通の人間との最も大きな違いだ。ごく普通の大人にとっては、具体的なものは頭に入りやすいが、数字のような無味乾燥なものや、無意味なものは記憶するのが非常に困難なのだ。語呂合わせにでもしないとなかなか覚えられない。

ところで、たまにテレビに出る“クイズ王”を見て、超人的な記憶力の持ち主だなあと思う人がいるかもしれない。だが、サヴァン症候群のような人は案外、滅多にいないと思われる。クイズ王の記憶量は長い年月をかけてコツコツと積み上げたものであり、一朝一夕には身につかない一種の芸だといえる。
クイズプレーヤーも一般人と同じく日付けを記憶するのは得意ではないと思われる。例えば、河童忌、南国忌、桜桃忌が誰の文学忌かは知っていてもそれが何月何日かまでは覚えていないものだ。クイズプレーヤーはどちらかというと数字を重要視しないのだ。例外もある。山の標高をチェックしている人はそこそこいるらしい。

ダスティン・ホフマン扮するレイモンドのように極端な人は、一般社会から排除され、施設の中で過ごさなければならなくなるのも仕方ないかもしれない。

ところで、クイズプレーヤーという人種は普通とは違った存在と見られがちだが、クイズ界は案外「常識人」の集合体であり、人付き合いに難のある人は居づらくなって消えていく傾向にある。クイズ人口を増やしたいのなら多少の過ちは多めにみたほうがいい。


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